11月30日
大学時代のサークル「あるこう会」のOB会は毎年キャンプと決まっている。
今の季節、キャンプするには寒いんじゃない?といったごく一般的な心配や懸念といったものはこの集団については当てはまらない。
例え極寒であろうと空気が凍ろうと関係なく「やる」。
そこには一切の疑問やためらいは存在せず、もし誰か弱音でも吐こうものなら、お前もヤキがまわったなと鼻で笑われ、夕飯の争奪戦においても周囲からの強烈なプレッシャーに戦線離脱という死活問題にまで発展することが危ぶまれる状況に陥ってしまうのである。ま、半分冗談ですが(半分本気ってことでもある・笑)。
僕は
前回から実に3年振りの参加であり、楽しみなことこの上ない。
今回はこのようなキャンプは久しぶりなこともあり、数日前から持ち物のチェックリストを作り忘れ物対策を施してきた。
僕は昔から旅やキャンプにおいて必ず何かしら忘れ物をするクセがあり、次こそは!と思いながら毎回現地で「あちゃ~」となってしまう。ここまでくると不注意というよりも行動パターンと言った方がいいんじゃないか、と思うくらい自分でも悲しくなってくるのだ。
今回はそれこそ20年来果たせなかった目標を完遂すべく注意深くリストを作ってきたのだが、早い段階でのデジカメとヘッドライトのバッテリー切れという致命的なミスを犯してしまった。さらに一人用テントで就寝前の醍醐味である「寝袋に入ってからの幸せな読書の時間」において、あろうことか肝心の文庫本を忘れるという活字中毒者にとってはもうそのまま消えてしまった方がいいんじゃないか、というもはや涙すら出てこない忘れ物をしてしまった。
嗚呼、もうオレはこの先、この課題を果たせぬまま、歳とともに物忘れという悪魔に支配され朽ち果てていくのかもしれない・・・(涙
ま、そんなダメなオッさんの呟きはさておいて・・。
向かうのは信州のキャンプ場。
季節はずれのキャンプ場というのは他の利用者もいないため、周りを気にせずに楽しめて都合が良い。
昔は「ちゃらちゃらとキャンプ場なんかでしてられっか!」と突っ張っていたが、時と用途を踏まえればこれほど快適なところはなく、また社会人として良識ある行動をとる上でも、今では穏やかな笑みを浮かべながら「やっぱキャンプ場っていいよね♪」と互いに酒を注ぎあったりしているのである。
国道を走っていると今日の参加メンバーからメールがきた。今から会うことが分かっていても「いやぁ久しぶりだな~、3年ぶりだもんな~♪」と懐かしく思いながらメールを開くと「間に合えば醤油と生姜を買ってきてください。」という極めて事務的な短文のみが記されていた。「久しぶり!」とか「今日はヨロシク!」等という文言は皆無で、まるで嫁からの買い物依頼メールでも来たのかと間違えてしまいそうな内容である。
買い足すものもありスーパーには寄るつもりだったので、ついでにこの使いっ走りも甘んじて受入れる(笑
買い物を終え、国道を離れて山道へ入る。
ついさっきまでは遠くに見えていた山の頂が随分と近くに見えてきた。夕日を浴びて赤く照らされる山肌が刻一刻と上の方へ移っていく。この赤色が頂きから消えると日が暮れる。
夕焼けを追いかけるように目的地へ向かいどんどん高度を上げていく。
到着。
辺りはしんとした空気に包まれ、眼下には赤く薄なびいたような景色が広がっている。
この時期の信州はかなり冷え込む。夜間は氷点下になるだろう。
そそくさと防寒仕様のスタイルに変身する。
荷物が多くテント場まで何往復かするのも骨なので応援を一人頼むと程なく懐かしい顔が一輪車を引いてやってきた。
メンバー達と合流。
再会に嬉しくなり早速飲みたくなるのを堪えテントを張ってしまう。
一人用のテントなので設営には時間はかからない。寝袋もセットしてしまう。酔っぱらってからの寝袋を敷く作業というのは意外と面倒だ。暖かい季節ならとりわけそうでもないが極寒仕様の時は何枚か重ねて使うので意外と労力を使う。ちなみに今回は外側からシェラフカバー、冬用シェラフ、3シーズン用シェラフ、インナーシーツの構成。全てモンベル製でシェラフはダウンハガー。これだけ重ねると、外気は氷点下でも寝汗をかくくらいに暖かい。そのかわり一旦陽が上りテント内が暖かくなると熱死しそうなくらいに暑い(^^;
作業を終えて宴へ突入。
火をおこして寸胴鍋をセットする。30センチ径なので結構大きなサイズだが焚火の火力は大したものですぐにお湯が沸く。
厚手のアルミ製でプロ仕様のものだ。(と言うかレストランで使われなくなり処分されるところを貰いうけたもの。)家の中では使いでもなくもう邪魔でしょうがないのだが、男の所有欲だけはしっかりと満たしてくれる諸刃の刃的存在感(笑
今日はこれで「爆弾」を作ろうと思うのだ。
鍋で爆弾というと圧力鍋爆弾なんていう物騒なものが取り沙汰されたこともあるが、これはれっきとした定番の野外料理である(汗
それも簡単かつ美味くて野外料理としてはとても優秀な鍋なのだが、これが家で作ると全然美味くない。野外で作って野外で食うからこそ美味い!というやはり「野外料理としては」とても優秀な鍋なのだ。
鍋の中にたっぷりの水を張って煮干しの徳用袋を2袋ドサッと無造作に投入。
鷹の爪を一袋、これもザバッと何食わぬ顔で投入。
続いてニンニクを数株、バキバキと分解し皮を剥いたらボッチャンボッチャンと放り込む。
お湯が沸いたら出汁の辛さをみる。好みの辛さ若しくはこれから具材を入れることを考慮してやや辛めになったところでプカプカと漂う大量の鷹の爪を取り出す。これを誰かの取り皿にそっと紛れ込ませ暗殺用として使うのも一興(笑
出汁がしっかりと摂れたら煮干しとニンニクを取り出す。
そして取りだした煮干しとニンニクに醤油をぶっかけたら思わず「!」となるほど乙なツマミに変身する。これがとても美味いのだ。辛いものが好きならば先ほどの鷹の爪も一緒に食べればたまらない。
出汁に酒をドバドバ、醤油をジョボジョボと入れて味をつける。量は適当でよい。大概何故か美味いから。家で食うと美味くないが(汗
スライスした豚肉とキャベツをザク切りにするか手で適当にちぎるかして投げ入れる。
火が通れば完成。
たったこれだけの料理である。これでどう失敗しろというのだと言うくらいに簡単な鍋だ。
しかし寒い季節には身体の中からホッカリと温まり酒が止まらなくなる必殺な美味さがある。
具は好みでいろいろ入れても良い。出汁が半端なく濃厚なので豚肉とキャベツだけで完成形な味なのだが、入れる具材によって味も変わるのでいろいろ試してみるのも面白い。
今回は他に鶏肉や豚モツいろんな野菜をどんどん投入し、途中でダッジオーブンで作った煮込料理もジャバーッと入れて合体させるなどかなり支離滅裂な荒技を連発したが、それでも立派に美味かった。
寸胴鍋火あぶりの刑(笑
使い終える頃にはススで真っ黒になるがスチールウールでガシガシとこすれば元通りピカピカになる。
手前にあるフイゴはデビルエイトとのコラボ商品(嘘
飲んで食って語って。
語って食って飲んで。
腹が満たされたらギターを取りだして歌を唄う。
野外での弾き語りは気分が良いが、寒さのため指がかじかんでしまいコードが押さえづらい(汗
かつての後輩で今や若き経営者となった男が仕事を終えて我々に合流した。
「年内の休みは明日で最後~。」
男はそう叫びながら自らのものを誇示するかのように一升瓶を股間に当てた。
製茶会社に勤める男が玉露を振る舞ってくれた。
あるこう会の歴史において緑茶が登場したことはおそらく一度たりともないだろう。もうね、おっとりと温かい緑茶でまったりとした時間を楽しむような学生じゃなかったですよ。
お茶よりも酒。酒といってもビールや日本酒よりも「大五郎」といった爆弾のようなサイズのリーズナブルな焼酎が学生の味方だった。
さすがプロだけあって急須から注ぐ手つきが我々と違う。
素早くチャッチャッって感じで小刻みに注がれたそれはとても甘く且つ香り高く感動的な味わいだった。
キャンプでいただく緑茶とはこれほどまでに良いものとは今まで知らなかったなぁ。
今回のキャンプ中、感じたことがひとつ。
「この人達、ホントいい人達だなぁ。」
今さら仲間達に対してそう思うのも変な話かもしれないが、こうして久しぶりに会うとつくづくそう思うのだ。
人間的によく出来た人ばかりで、とても尊敬できてしまう。なんだか悔しいけど(笑
自分自身が恥ずかしくなってくるよ、全く(^^;
翌朝。
夜中、かなり冷え込んだようだ。
寝ているときは全く寒さを感じずかえって暑いくらいだったが、寝ぼけ眼でテントの外に出ると凛と張りつめたような空気が身体に染みいってきた。
この季節らしいキャンプの朝だ。
冷たい水で顔を洗うと一気に覚醒した。
米を炊き前日の爆弾を温め直して朝飯。
そうこうしていると卒業以来会っていなかった先輩が現れた。15、6年振りかな。
焚火を前にしていると、なんだかとてもそんな時間が経ったとは思えない。
東京での仕事を終えて帰り道に寄ったとのことだ。
酒を酌み交わせないのが残念だけど、会えて良かった。
空がとても高い。
突き抜けるような青く晴れ渡った信州の空は北陸のそれとは明らかに違う。
そんな開放感に満ちた空の下、仲間達の笑顔が見られたことが嬉しい。
みんな日本各地へまた散らばっていき、それぞれの生活に戻っていく。
共に過ごした仲間の存在と共有した時間は、やはり自分にとって財産なんだろう。
良い時間を過ごせた。
仲間達に感謝。
また会おう。
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