夏の忘れもの

ネオプラMASA

2017年01月29日 00:13

荒れた日が続くがしゃあないこれが冬の日本海だ。
先日、久しぶりのポイントをふらふらと釣り歩いていた時。地元の常連爺さんと仲良くなり話し込んだことがあった。
爺さん、親切なものであれこれとこの界隈の状況や釣り方などを丁寧に教えてくれる。そんな爺さんと話すうちにふと心によぎった。

これならアイツ狙えるんじゃないか?

そう思い爺さんに尋ねるとこれまた「釣れるよ」と断言するではないか。
ま、釣り人の断言ほど断言できない内容なことがほとんどであることは断言できるのであるが。
それでも季節外れの今でも釣れる可能性は十分にあると踏める内容であったし、事実、爺さん自身、「この前」も釣れたところを見ているらしい。
ま、その「この前」ってのが現時点からどれほど遡る「この前」であるかは不明であり不安であるが。


大切なのは自分の心に火をつけてくれるかってところ。爺さんの話は十分に火をつけ燃やしてくれた。
スイッチが入った。

行くか、マゴチ釣りに!



季節的にはオフである。
マゴチとくれば初夏の釣りもので5月中頃から7月が僕の狙うシーズンであり、多くの方も同じようなものであろう。
しかし昨年の僕はこの季節、釣りが出来なかった。
いや、正確には釣りをしなかった。
息子が事故で怪我をしてしまい、辛い思いをしている本人をよそに親父がのほほんと釣りなんぞに興じてられるか、という思いに至ったのだ。息子はやりたいことも出来ないどころか生活にも支障をきたしているわけだから、オレもせめて「やりたいこと=釣り」くらいは怪我が治るまでは我慢しようと。その怪我も夏が終わるころには治り、僕の釣りも解禁したと。
で、禁釣をしていた頃がちょうど初夏の釣りものであるマゴチの季節と丸被りしていたわけで、昨年は全く狙うことがなかったのである。

しかし、つい先日が大寒だったばかりの今日。雪に覆われた釣り場であるが、確信を持ってマゴチを狙えそうな条件の釣り場。

そうだ。

夏の忘れものを獲りに行こう。



27日。


夜中から南風が吹き荒れている。
昨日まで地面を覆っていた雪は一晩でかなりその姿を減らしてしまったようだ。
今年は年明けからあまりいい釣りが出来ていない。と言うか散々だ。
初釣りはデイシーバスをやりに行ったが、ヒットするもまさかのPE高切れ。その後、タコ狙いに行くが根掛かりを外そうとしたらロッドティップがパッキンッと折れた。先日は釣り開始と共にいきなりイルカの群れが眼前に現れて強制終了。
ほんと散々な新年からの流れ。
でもその理由もわかっている。
外海が荒れていて本来やりたい釣りが出来ずにその場しのぎの釣りに走っていた感があるからね。気持ちが乗っていないのよ。
でも、今は違う。
久しぶりに熱くなってるのが分かるもん。


前日用意しておいた孫針を付けた静ヘッドとローリングシャッドをセットする。ルアーマンの姿が数人見えるが誰もワームぶら下げている人はいない。そりゃそうか。

ゆっくりと溶け始めた雪の覆う路面をザクザク鳴らしながらポイントへ向かう。
時々雨が思い出したかのようにパラつき、また止む。
空は高曇りであるが、所々に重い色をした雨雲が様子を伺っている。
はっきりとしない。冬の空。


潮の流れが思いのほか早く、ともするとリグが流されがちになりそうだがそこは丁寧に底どりをしながらボトムバンプで探っていく。活性は低いであろうから、通常よりもスローな誘いを心がけて。
延々と続くポイントの中間地点から少し進んだ辺りで。


キャスト~着底からラインスラッグを獲ってリグの方向を整えてからのワンアクションめ。
フォールで弱いアタリがコツンときた。
ティップで聞いてみると弱いながらも反応がある。
乗ったか?
・・・・・・・・乗った・・かな。

一呼吸ためてからの大アワセをぶち込む。
ガッと曲がるロッド。
直後、ゴンゴンゴンゴンゴンッと伝わるヘッドシェイクがビンゴを伝えてくれた。
ほとんどトレースしていない箇所でのヒットなので50mの距離を寄せてくるのは長くドキドキを楽しめたよ。




やったぜ冬マゴチ!
雪の上のその姿がとても新鮮。
夏の忘れもの、ちゃんとあったよ。

狙って釣ったのはもちろん、友達に教えてもらったり釣具屋で仕入れたりした情報ではなく、自分の足で手にした情報で結果が出たことが嬉しい。
そんなポイントは自分にとって本物のポイントだなぁ。



その後、いよいよ潮がぶっ飛んできて釣り辛くなってきた。
途中、嵐が通り過ぎ、その眼も開けていられないくらいの風雨に他の釣り人は一掃され、残っているのは濡れネズミとなった僕だけとなった。
20年選手のノースフェイスのマウンテンジャケットは防水機能が目に見えて落ちてきており一定以上の雨には耐えられず、今日もまた浸みてくる雨を感じながらの釣りとなった。まあいいや、どうだって。


ポイントの終着点。
アタリがあったが乗らなかった。孫針にも乗らなかったのでおそらくは根魚が引っ張っていたのだろう。
で、その答えはすぐに出た。次のキャストで10mほどずれた箇所で早速反応が。
アワセを入れると乗るには乗ったが引きは弱い。




久しぶりのキジハタだったね。サイズは27,8ってとこかな。
ソイかカサゴかもと思ったけど、季節外れの根魚3兄弟のひとりだったか。
考えてみればこれも夏の忘れもののひとつなわけで。



ここで時間となったので釣り終了。
結果としては狙い通り。
ようやく平成29年の年が明けた感だ。
ようやくだよ。
今年もめでたく年が明けたようだ。




しかし。

今日の釣りではひとつ出来事があった。


底を引いてきたリグに「それ」は引っかかった。
根掛かりかと思ったが強めのタックルなので強引にリフトする。
するとガバッという感じで底から何かを引っ掛けながら上がってくる感触があった。


何か。


海中から見慣れない影がゆらゆらと上がってくる。


何か。


「それ」はやがて水面に姿を露にした。



まさか・・・・。

「それ」は様々な媒体を通しては見たことはあったが、実物を見るのは初めてのものであった。

抜き上げて僕の目の前に「それ」は転がった。


















・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



こけし!?!?!?






伝統工芸?



否!




新日?



否!





電動っ!!




なんてこった。
こんなもん初めて釣ったぞ。
釣りを始めてから30年以上。初めての「もの」であり、この先も出会うことはないであろう「もの」。ってか出会ってたまるか!

なんだよコレ。
なんでこんなもんがあんのよ。
で、なんで俺がこんなもんを引っ掛けなあかんのよ。
今まで空き缶だわ長靴だわ、ベタなものはいろいろ引っ掛けてきたが、これは想像だにせんかった。

・・・・・・これ、使用済みよな・・。
やっぱ使ってるよな・・・・。
使わずに捨てんよな・・・。
これを海中投棄せざるを得ない理由があったんよな・・・。

そのドラマを想像すると、僕はなにやら複雑な心もちになったのであった。目の前の「それ」を眺めながら・・・・。

いやいや、こんなもん釣ったところを他人に見られては釣りをたしなむ者としては末代までの恥だ。幸いにも先ほどの嵐で周囲に釣り人の姿は無い。
この時ばかりは、鬼のような嵐に僕はひとり静かに感謝したのであった。


いやね、なんでオレはこんなもん釣らなあかんのだ。ネタとしては面白いのかもしれんが・・・。

僕は声を大にして言いたい!

「オレは、魚を釣りに来たのであって、ネタを釣りに来たのではない!!!」


以上!




〈タックル〉
ロッド:Noreis FlatFishProgram ROUGH SURF88
リール:Daiwa CERTATE2500
ライン:DONPEPE1.2号
リーダー:SeagerGLANDMAX5号























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