寒ボラは本当にうまいのか

ネオプラMASA

2015年02月24日 02:52

とうとうこの好奇心に対する答えを出す日が来た。
ボラ、食ってみた。





お、おう・・・・。



初挑戦でうまいこと釣れたコブダイだけど、その後は2連敗。
やっぱそう上手くは事が運ばんわな。


餌にホタルイカ付けたらそれと同じくらいのナマコが釣れるという・・・。
そんな珍事よりもわたしゃ魚がいい(涙



今日はメジナ。
2月も後半に入り僕のメジナシーズンも終盤に差し掛かってきた。楽しめるうちはとことん楽しもうと例年以上にメジナ狙いを続けているがもうそろそろ終わろうかね。


9時過ぎに現場着。
朝方まで降っていた雨は既に上がり、やや湿り気を帯びた浜風が吹く海は春の気配が混ざっている。
昨日は春一番が吹いたそうで季節は明らかに進みつつあるようだ。


コマセを撒くと青色のメジナが湧き上がってくる前に黒い影が舞っている。

あ~ウミタナゴが湧いてるわ。

先日はあまりその姿を見せなかったタナゴだけど今日はやたらとたくさん居る。
なんじゃこりゃ。
メバルと同じく春を告げる魚だけに春の知らせでも持ってきたか。


で、こいつが厄介なのである。


撒いたコマセに対してメジナより上の層に陣取り、それよりも付け餌に積極的に喰ってくる。
メジナは付け餌に対してコマセと同調するまでは警戒心を持って泳ぎ回り、コマセに狂った状態になってから喰ってくるのに対して、タナゴは付け餌が単体でもどんどん当たってくる。メジナの前に当たってしまう。
しかも針から餌をとるのが結構上手いのでなおさら厄介。



これは本日のタナゴで最大の27センチ。
延べ竿と玉ウキで狙えば春の風物詩的な釣りとして風流なんだろうけどね。


コマセを撃った直後はタナゴが勝るので、少しタイミングをずらしタナゴが引っ込みメジナが乱舞しだすタイミングでそのタナに仕掛けを流し入れるようにする。
それでもかなりタナゴの餌食にはなるのの、



ちゃんと本命が釣れるようになった。
そのくらい徹底しないと今日はメジナが掛かりそうもない。そのくらいのタナゴ祭り。


風が出てきた。
2枚潮がやっかいで苦戦する。

そのうち、目の前に3匹のボラが現れた。


お、出たなボラボラめ。


正確にはボラではなくメナダの方なんだけど、同じくくりでいいと思う。
デカイな~。
ここでメジナをやっていると撒き餌に反応して時々やってくる連中だ。毎回登場するわけではないが、今日は現れなすった。

今日こそ、やっちまうか!


僕とボラの付き合いは古い。手の届く範囲にいる魚だけに多くの釣り人がそうであると思うが、今までの釣りの場面で決して主役ではないが思い出の節目節目に登場するというか。

小学生の頃、親に連れられ新港で釣りをしていた時、隣の釣り人がでかいボラを掛けて往生しているのを見てその大きさに仰天した。
なんだ?このでかい魚。でかすぎだろ!
その興奮すべき大きさであるのに、周囲の反応は「あ~ボラね。」というとても冷めたものであることが僕を混乱させた。釣り人特有の良い魚良くない魚っていう独善的とも言える色分けを教えてくれたのはこのボラだったのかもしれない。

その後、大人になるまで幾度かボラとの邂逅があり。
以降も筏釣りで、大クロダイやっちまったか俺!と満月に曲がる竿に色めき立ったところ「どうもワシで悪かったね。」とこちらを横目で睨めつけながら水面を割ったその姿に脱力したり。
またある時は真夜中のシーバス狙いでやたらと走りまくり往生して取り込むと背中にスレ掛かっていたことが1年に1度はあったり。
マゴチ狙いでテキサスをリグったパワーシャッド5インチにガッツリ喰ってきて一瞬オレを焦らせたり。

様々な場面で顔を出す脱力大王がボラだった。


そんなボラに対してずっと気になってたことがひとつ。


寒い時期の寒ボラって食べるととても美味いと昔から本でよく書かれているしネットでも出ているけど、果たして本当にそうなのか。
とても興味があった。
しかしわざわざその検証をしに釣りに行く気にもなれず、また安定的に釣果が望めるのは漁港や港湾の中だったり河口付近だったりでどうにも身の匂いがきつそうなやつが多そうだったから。

ボラを食べる目的なら水のきれいな外洋向きに棲む個体が良く、また寒い季節は泥臭さが消え味がとても良くなる。

こういう風なことがどれにも書かれている。泥が主食のデトリタス食性の持ち主なだけに生息する環境に味が左右されるのは致し方ないところ。正確には泥というかそれに含まれる有機質を食べてるわけだけど、文字通り泥喰って生きているスゴイやつである。
いつか冬に水のきれいなところでボラが釣れたらその時は食べてみることにしよう、そうぼんやりと思っていた。

そして今。

この場所は外向きで潮通しがよく、また河口に絡む立地でもない。食べるための条件は良い。
目の前を泳ぎ回るその姿を見ながら決めた。


長かった俺とボラの物語、それに今終止符を打とう。


コマセによく反応しており、水面を漂うグレパワースペシャルだけを選び喰っている。
ほぼ水面の釣りなので仕掛けのガン玉を外し、まずはオキアミを付けて投入する。しかし口に入れるもすぐに吐き出し、あくまで粉モノに対するコダワリが強いようだ。さすがデトリタス食性。でもオキアミでも普通に喰ってくる時もあるんだけどな。

・・・・意外と手強いな。よし、じゃあこいつでどうだ。

僕は持ってきた昼食用のナイススティックをちぎって針に付ける。(僕は釣りの時はほぼ飲まず食わずで通すことが多いのでパンやおにぎりを持ってきても結局食べないことが多いのだ。)
パン好きそうだもんな、オマエら。水面をフワフワモロモロと漂うパンなら1発だろ。

しかし予想に反して喰わない。鼻先で触れただけで拒否られた。
なぜだ!絶対釣れると思ったのに。まじで手強いな。ちょっと本気で挑まないと返り討ちにあうパターンかもしれん(汗

針にコマセを練り合わせたものをヘラ釣りのように付けて投入。水面直下でバラけていくところを喰わないかと。
しかしこれは華麗にスルー。なんてこった。
場所を整え直そう。

まず、やや前方で展開していた釣りをコマセを手前に打ちながら足元に魚を寄せる。
足元をポイントにした方がこちらは楽だ。
そしてコマセを少量ずつ撒きながらボラ達を狂わせていく。しばらくするとコマセの粉部分だけ喰っていたのが、水面を漂うオキアミの欠片も喰うようになった。1匹まるごとはダメだけど小さくちぎれたものなら大丈夫そうだ。
針に付け餌用に避けてあるオキアミではなく、コマセの中の崩れたオキアミを選んで粉部分をたっぷりとまとわせて針に付けた。そして足元でパクパクやっている3匹に投入。

するとその中で1番大きいやつが付け餌に反応した。
うわ、オマエじゃなくていいのに・・もう少し小さいやつで十分なのよ(汗
そう思った瞬間餌を吸い込んだ。また吐き出すか。あわせずに見続けるが口から餌は出てこない。
よし、喰った!


アワセを入れるとのったりとした重量感がロッドを伝わった。
ロッドは今回もAR-CのUL。ちょっと今から頑張ってもらわなんといかんな。
相手はゆっくりと身体をくねらすだけで大きく暴れない。ロッドが柔らかい分だけに本気になっていないというか、自分の身に何が起こっているのかも理解できていない様子にも感じられる。
そのまま顔を水面から出して空気を吸わせる。このまま決着すれば楽だな。そう思った瞬間身を翻しダッシュした。

ドラグを気持ちよく出しながらの疾走。おお~怒った怒った。

しかし寄せて走られてを3回ほど繰り返すと勝負あり。水面から出た顔がマイッタしてたのでタモ入れ。
ってか重っ!



ぬ・・・、なんだこの存在感。
正確にはメナダ。ボラの目ってちょっと怖いけどメナダの目も末期的な怖さがある。




ひ~、黄色く飛び出た目がやっぱ強烈。黄疸出てないっすか、大丈夫っすか。
ってか俺は本当にこれからこいつを喰うのか・・・。


意を決して血抜きを実行。



で、その場で捌きにかかります。
泥臭いといわれるコイも釣って現場で3枚に卸して持ち帰ったら臭くなかった。多分ボラも同じじゃないかと。
見た目に反して中から出てきた身はとても綺麗な白色で、サクサクとしたその身は100均のナイフでも捌きやすい。

そしてクーラーボックスに放り込んで終了。



メジナ釣りに戻る。
ひとまわり大きなサイズの群れが現れたようだ。
付け餌が群れの中で見えなくなり潮受が引き込まれたタイミングであわせると気持ち良くロッドが引き込まれた。



30センチを超えるサイズになると見た目にも逞しさが出てくるね。

よしこの調子と続けて振り込んだ仕掛けにはウミタナゴが邪魔に入ってしまった。急いで針を外して仕掛けを投入しようとしたその時、いきなり一層強い風が強く吹き始めた。
海面は波立って偏光グラス越しでも中がよく見えない。そして強烈な2枚潮で仕掛けがうまく馴染まない。一瞬で海況が変化してしまった。もともと今日はやりにくい状況だったけどここに来てトドメを刺された感じ。こんなの俺じゃどうにもならん。
このタイミングでこれか。こりゃボラの祟りか。いや、普通に考えればメジナの祟りか。
しばらく続けていたが、ひどい状況は変わらず手も足も出ないので「まいりましたぁ!」と白旗振って撤収。



さてボラ料理である。

結論から言うと、これはマジで美味い。
予想してた以上に美味かった。

作ったのは、


刺身と、


カルパッチョ。

「ボラのへそ」と呼ばれる胃の幽門部が珍味らしいけど、野外でオンドリャ~と捌いていたらすっかりその存在を忘れてしまっていた。勿体無いことをした。
きめの細かい白い身に鮮やかな血合いの赤がとても綺麗だ。匂いをスンスン嗅いでみても全く臭さは感じられない。釣り上げた時のあのコイやフナのような強い魚臭さからは全く想像出来ない無臭。血抜きが完璧に出来たのもあるだろうがわずかな泥臭も磯臭もない清廉な白身だ。

そして味。
噛むとシコシコとした強い弾力があり歯ごたえがよく、また身も僅かな脂のコクをまとった白身らしい白身でありとても美味しい。
薄作りにすると完璧に美味い。
カルパッチョがこれまた良かった。
メジナも同じくカルパッチョにしたのだが、なんとメジナのそれよりも明らかに美味かった。オリーブオイルとの相性がとても良いのかも。驚いた。
ボラパッチョ恐るべし。

釣ってきた僕の贔屓目ではなく、先入観のない嫁と子供がこれは美味いとどんどん食べていたので、本当に良い味なのだ。
逆に僕は食べている最中にあの怪しく光る黄色い目をした風貌を思い出してしまい、一瞬味が分からなくなったことがあったが。でも美味いからまたどんどん食べるのだ。
ボラパッチョ、バゲットと白ワインがあれば味のボマイエ喰らったようなもんですよ。(意味不明。)


とにかく。
先入観ってやっぱ勿体無い。
こんなに美味いのならもっと冬にボラは釣られて食べられて然りである。しかし今も蔑まれて邪魔者扱いだし、この僕でさえ今になってやっと食べたくらいだからまだまだボラの味が正しく認知されるまでには時間がかかりそうだ。
しかし富山ではもともと食べなかったメジナも最近は人気が出てきたので、ボラもいつかはそうなるかもしれない。
水の綺麗な場所のボラは取り合いになる日が来るかもしれないから、その日まで僕はこっそりとその味を楽しみ続けることにしよう(笑




















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